数学IAは試行調査と比べるとセンター試験寄りになっていて、大幅な変更については今年は断念したような印象です。出題内容は大問数・出題分野とも昨年からほぼ変化は見られなかったものの、試験時間の増加に伴い文章量は増加。10分程度増えたところで読み取り、思考するに十分に足りるような増加量ではないため、受験生にとっては時間不足からくるあせりによる難しさを感じていたのではないだろうかと思います。全体的に計算量も増加しているようですが、これは時間延長分と考えるとそこまで増加したとはいえない感じです。計算スピードはセンター試験の時と同じくらいで済んだのではないかと思います。全体的に設問ごとに最後に面倒な計算や思考問題をもってきていて8割とるのはさほど難しくはないが、満点をとるにはやや難しい、といった印象です。結果センター試験よりはやや難しくなったのかなといったところです。
第1問には必要十分条件に関する出題がなかったのは平均点が下がらなかった一つの要因ではないかと思います。第2問では二次関数が文章題になり、陸上がテーマとなっていました。陸上部経験者でなければ耳慣れない言葉だったかもしれませんが、よく読めば対応できる問題です。データの分析では用語等をしっかり把握していれば、変換系が出てこなかった分「時間が許す限り」満点はとれそうです。この「時間が許す限り」というのが曲者で、難関大学を目指す受験生にとっての一番の敵は、難易度の高い問題ではなく「スムーズには解けないけれど、なんだか解けそう」という問題です。解き終わるころには気づけば時間が足りなくなっています。その結果普通に解けば解ける問題を、時間不足で焦って解いて間違える、といったことが起きます。どこで見切るか時間管理も一つの課題と言えるでしょう。
第3問4問5問は比較的よく出てくる題材が扱われているため、どの問題を選んでもあまり難易度に差はないと思われますが、共通して最後にそれまでの解き方や会話をヒントにしながら誘導なしで解かねばならないところがありやっかいでした。
数学ⅡBは試行調査と比べるとかなりセンター試験寄りの印象です。試行調査を引き継いでいたのは第3問に確率分布が来ていたことくらいかと思います。文章量は増加して選択肢から選ぶ問題が増えたものの、計算量は減少。計算の難易度も下がっており十分に対処できた問題構成になっていたので去年度よりは易化しました。
第1問は三角関数、指数対数関数はオーソドックスな出題内容で、あまり差が出ない構成でした。指数対数の後半においては思考問題となっていますが、具体的な値を入れて確認できる分複雑ではありませんでした。第2問の微積分は文字係数のまま計算させるのは目新しい感じですが、二次試験で数学を使う人にとっては分数よりも計算しやすかったのではないかと思います。面積計算もいわゆる1/3公式が利用できる形であったのでセンター試験に近い出題でした。
第4問の数列はセンター試験では年を追うごとに複雑化していた漸化式が、誘導に従って進めていけばよいだけのタイプになっていました。昔のセンター試験に多かったタイプです。思考はそれほどいらず計算量も今までに比べると減少しています。第5問は正十二面体がテーマでした。これも丁寧な誘導があり、それに従って進めていけば解けるという構成でした。知識計算量ともに適量な感じで見た目ほど難しくはなかったと思います。
今年度は試行調査の内容と比べるとセンター試験寄りであったかと思いますが、テクニックがあればなんとかなる、という問題は減り、日常の目新しい題材を数学と関連付ける文章を読んで知識と結びつけさせ考察させる、といった問題が増えそうです。
来年の第2回共通テストでは今年度よりもいっそう問題の意図を読み取る力、誘導に従い手順を再現できる力、具体的な例から一般化していく力などが求められることでしょう。
日ごろから解答を眺めただけで終わらず、手を動かして具体的に試す、正しい図を描き目で見て解く、時間を意識する、といったことを念頭に置いて問題演習を行う必要があります。
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